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「・・・という訳で、キャプテンに告白したはいいけど、返事はもらえず、逃げられちゃいました」 「なるほど。そんな事があったのか」 つい昨日のことだ。円堂が帰り際に部室棟の見回りをしていた時、ただならぬ雰囲気の天馬と神童がいたのは。 何事かと問いただす前に、神童は部室を飛び出して行ってしうし、後に残された天馬も呆然と立ち尽くすのみだった。 時間も遅かったし、その場はそれでお終いにしたのだが、今やサッカー部の中心人物ともいえる二人だ。 二人がギクシャクしたままだと部の雰囲気にも関わってくるし、円堂は天馬を呼び止め、こうして事情を聴いている訳なのだが。 時と場所が悪かった。 時−部活開始前。 場所−部室。 そこには当然、他の部員がいた。 そして当たり前だが、神童もいた。 「天馬ぁーーー!!!」 ++++++++++++++++ え、なに。天馬って神童が好きなの?マジで?告白??っていうか手を握ったって言ってるし。天馬が神童の手を!?部内って恋愛禁止じゃなかったっけ?え、それマネージャーと選手の話だろ。選手同士ならいいのか?いや、それ以前に男同士だし、問題外じゃね?それ偏見じゃない?でも男同士だよ?っていうか神童が天馬に神童が天馬に神童が天馬に・・・神童ーっ!!! 部員たちの間で微妙な空気が流れる中(ちなみに、最後のは霧野の心の叫び)、真っ赤を通り越してすっかり青ざめてしまった拓人が、天馬と円堂の間に割って入る。 「てっ・・おま・・・な、に・・・(天馬。お前、円堂監督に何を言ってんだ)!!」 「大丈夫ですか、キャプテン」 誰のせいだと思ってるんだよ!! 「とりあえず落ち着け、神童」 これが落ち着いていられますかっ! 天馬と円堂に宥められながら、椅子に座らされ、拓人は何とか息を整える。部員たちは少し離れたところから、遠目で見守っているし。 え、なに。この雰囲気。 それに当の天馬に宥められるとか、ものすっごく不本意なんですが。 「それでだな、神童」 他の部員たちのドン引きした空気など、円堂は全く気にならないらしい。 「話を聞いたところ、天馬は決してふざけている訳じゃなくて、真剣にお前のことが好きらしいんだ」 「そうですか」 知ってます。今聞きました。オレすぐそこにいたし。ていうか、部員全員聞いてました、今の話。 「頭から否定するんじゃなくて、少し考えてみたらどうだ?」 「はいっ!」 そこで突然の挙手。 「よし、霧野」 手を挙げたのは霧野だった。 教師が授業中の生徒をあてるように、円堂が霧野の名を呼ぶ。 「神童の意思はどうなるんですか?」 「天馬の気持ちに応えてやれなんて言ってないよ。たださ、男同士だとか、学年が下だとか、そういうの抜きにして、天馬のことを一人の人間としてとらえてみたらって話で」 「はいっ」 今度は浜野が手を挙げる。 何だかんだと、皆ノリが良いな。 「うん、浜野」 「ちゅーか、カントク、それにしたって天馬に甘くないですか?」 「え〜、そうかぁ??天馬の話聞いてると、一生懸命で応援したくなるのかな?」 「はい」 今度は三国さんだ。 「何だ、三国」 「天馬が真剣なのは分かったけど、えーと、天馬がどうして神童を好きになったのか分からないんですが」 「一目ぼれに近いです」 答えたのは円堂ではなく天馬だった。 「剣城のボールからかばってくれた時から素敵な人だなって。でもはっきり好きだと自覚したのは、キャプテンがその後の試合で化身出した時です」 あー、あの時。 やっぱりね。 まぁ、そうだろうとは思ったけど。 そんな空気が、天馬の言葉を聞いた部員たちの間で流れた。 その後の試合で化身を出したとき・・・つまり、拓人が天馬の前でポロポロと泣いた時だ。 「あんな風に目の前で泣かれたら、誰だってキュンvってなっちゃうよ。オレだってなるもん」 え、監督その場にいなかったでしょ!? うんうん、と頷きながら話す円堂を、部員たちは胡乱な眼差しで見つめる。 そしてそれを聞いた拓人は、円堂に食って掛かった。 「なりません!!オレそんなに泣いてませんから」 否定する拓人に、畳み掛けるように円堂は言う。 「泣いてるよな。毎週。OPで」(『天までとどけっ!』) 「それを言ったら、円堂監督だって、毎週OPで泣いてたじゃないですか!!」(『マジで感謝!』) 「(おぉ、随分古い話を出してきたな!)でもオレ、あんなに可憐には泣いてなかったモン」 「泣いてない!可憐になんて泣いてない!!」 ブンブンと首を振って、必死になっている拓人に、今度は天馬が声を掛けてきた。 「オレ、華麗に泣くキャプテンが大好きですよ」 「誰が華麗になんて泣くか!何キャラだ、オレ!!!」 お前は辞書で『可憐』と『華麗』の違いを調べてこい!と天馬に蹴りを入れ追い払い、拓人は円堂に向き直る。 「監督も。天馬を煽らないでください」 「え、俺煽ってたつもりないけど」 アハハーなんて、適当に笑う円堂。 もうダメだ。 監督には何を言っても無駄だ。 そう思った神童が、周囲に視線を向けると。 初めて会ったときにあんなふうに泣かれたら仕方ないよな。 その後も、事あるごとに、天馬の前ではらはらと涙を流してたりしたしな。 でもって、復活した後のあの凛々しい拓人。 もともと雷門サッカー部に憧れていたわけだし、その雷門サッカー部のキャプテンで、周囲からは神のタクトなんて呼ばれている拓人を、天馬が好きになってしまうのも、まぁ仕方のないことなのかな。 と。 そんな空気が部員たちの間に流れていて。 「いや、ないから!うっかり泣き顔見たからって、男が男を好きになるとか、おかしいし!」 その空気を敏感に感じ取った拓人が、必死に周囲に訴えかけるが、すでに無駄な努力だった。 みな口々に「まぁ頑張れ」だの「神童も大変だな」だの無責任な言葉を口にしつつ、すてに傍観を決め込むつもりだ。 困ったときの神頼み、ならぬ困ったときの霧野である。 頼りになる幼馴染にすがるような視線を向けると、霧野は拓人に、力強く頷いてみせた。 そして。 「神童の涙をみて好きになったなんて、オレは認めないぜ」 腕を組んで勝ち誇ったような表情を浮かべる霧野。 「神童の泣き顔なんて、オレは散々見慣れてるからな」 「えぇっ、そこっ!!???」 さすが幼馴染。 つか、そんな言い方だと、普段から泣いてるみたいに聞こえるだろうが!(いや、実際泣いてるんだけどね) 「いいなぁ、霧野先輩」 「全然よくない!!!」 前途多難な拓人とサッカー部だ。 |
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