| 決意の朝 | |
「おはようございます、キャプテン!」 松風天馬の明るい声がグラウンドに響く。 挨拶が終わっても、何だかんだと話しかけながら、神童にまとわりつく天馬。 いもの朝の光景だ。 イラついた神童に「うるさい、さっさとランニング開始しろ!」と蹴られるのもいつも通り。 そんないつもと変わらないはずの風景を熱心に見つめる人間がいた。 2年生MF、速水鶴正だ。 「…いいなぁ」 朝から仲良し(?)な二人を眺め、そう呟く。 天馬がうらやましい。 いや、別に蹴られたいとか、好きな人に罵られたいとか冷たくされたいとか、そういうワケではない。それではただの変態だ。 そうじゃなくて。 天馬のように、好きな人に素直に自分の気持ちを伝えることが出来たらいいのに。 自他ともに認めるネガティブキャラの速水は、天馬の半分、せめて5分の1、いや10分の1だけでもいい、前向きになれたらと思うのだ。 速水にだって分かってる。 こうして二人を見てたって仕方ない。 速水の好きな人に気持ちが伝わるわけではないし、相手との関係が変わるわけでもない。 「ダメだ、こんなんじゃ」 やる前から諦めてちゃ何も変えられないって、ついこの前学んだばかりじゃないか。 いきなり自分を変える事は出来っこないけど、少しずつ、変わっていけばいいのだ。 自分の気持ちをはっきりと口にするのは無理でも、天馬のように明るく「おはよう!」と声をかけることは出来る。 よし。 ずは挨拶から。 速水がそう決心した時だった。 「おっはよー、速水!」 声をかけられると同時に、元気よく背中をたたかれた。 慌てて振り向くと、朝から元気いっぱいの浜野が、速水の顔を覗き込む。 「なに朝からボーッとしてんの」 「あ、はい。ちょっとあの二人を・・・」 二人が視線を送ると、天馬が神童に『お前は信助とパス練だ』とすげなくあしらわれている所だった。 「ホンット、天馬もこりないよなー」 「ですよね。オレにはとても・・・・・・って、ああぁぁぁっ!!!」 「えっ、ナニ!!???」 突然大声をあげたかと思うと、頭を抱えてしゃがみ込む速水。 何が起こったのかわからず、呆然とする浜野。 ま、そりゃそうだ。 おはようと声を掛けただけなのに、突然この世の終わりみたいな悲鳴をあげられたら、誰だって驚く。 浜野は知りようもないのだが、速水が朝っぱらからジメジメしていた原因、挨拶から始めようと決心した相手、それは実は浜野だったりする。 つまり速水は、浜野に友達以上の気持ちを抱いていて、でもって、そのことを現在進行形で悩んでいるわけだ。 松風天馬。 ひどく前向きな彼を見て、自分も変わらなければと決心した速水だったわけだが。 『明るく挨拶』 最初の一歩からすでに失敗しているのだった。 |
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| 企画第一弾『ポジティブキャンペーン』をお届けします。 『ぷりんちゅ』のみに。ちゃんと合同の、「普段ネガティブな速水が、1週間に1度ポジティブになっちゃうぜ!!」という企画です。 つまり、1週間に1作品、速水中心に更新されていく予定です。 とりあえず。 最初の課題はクリアだぜー。 来週更新に向けて頑張るぜー。 |
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