| きっかけは○○ | |
きっかけは、朝食の時に母親から渡された、2枚のチケットだった。 地元の大型デパートで開かれている絵画展。 速水が気に入っている日本人画家ので、TVCMなどで個展が開かれていることは速水も知っていたのだが、入場料が中学生が払うには少々高めだった。さらに、デパートで開かれるイベントとはいっても、中学生が行くには少々敷居が高い、気がする。行った事ないけど。 が、その画家を速水が好きなことを知っていた母親は、新聞の集金に来た人から、わざわざ招待券をもらってくれたのだった。 そういえば、ウチでとってる新聞が、その絵画展に協賛してたな。 もともと絵に興味などない速水だが、その画家の描く幻想的な絵を一目見て気に入った。 ポストカードも何枚か持っているし、画集は高くて買えなかったので、学校の図書館で何度か借りてみた。 だが、実物を見たことは1度もない。 せっかくタダ券があるのだから、ぜひとも行きたい。 と、思うのだが。 サッカー部の面々を思い浮かべる。 あの中で、絵に興味がある人なんているのだろうか・・・。 クラシックが好きだと言っていた神童なら、同じ芸術ということで、絵画にも興味があるかもしれない。 霧野も絵とか好きそうだ。何となく、イメージだけど。 浜野と倉間は、興味ないだろうな。 前に国語の授業の時「詩とか絵とか音楽とか、解説がないとさっぱり分からない」といったようなことを話していたし。 最初にチケットを手渡された時、浜野を誘ってみようかな、と思ったのだ。 この画家は、主にヨーロッパの風景画を多く描いているのだが、水辺の風景が多いうえに、イルカなどの海の生き物をモチーフにした絵もたまに描いていたりする。 海の絵なら、浜野も興味を持ってくれるんじゃないかな、とチケット片手に頭の片隅で速水は思った。 けど。 そもそも絵に興味のない浜野が、はたして絵画展などに行きたいと思うのか。むしろ、興味がないのにわざわざ付き合わせるようなことになったら、それこそ申し訳ないことになる。 だとしたら、神童か霧野を誘ってみるか。 けど、彼らと二人きりで出掛けたことなど今までないし、学校でだって、二人きりになることなんてまずない。休みの日に一緒に出掛けたとして、一体何を話せばいいのか?会話が続かなくて、つまらない奴と思われてしまうのがオチだ。 いや、神童も霧野もそんな風に考える人たちではない。むしろこちらに気を使ってくれるだろう。しかし、それはそれでは申し訳ない。 じゃあ倉間はどうか。 うん、ダメだろうな。倉間は興味のないことはハッキリキッパリと断ってくるタイプだ。 3年生。 無理無理無理!!神童や霧野以上に、間がもたない。1年生達も同じく。 マネージャー。 すみません、未だに話したことがない人います。 誰を誘おうか、考えれば考えるほど答えが見つからなくなる速水だ。 わざわざ新聞の集金人にチケットをもらってくれた母親には悪いが、いっそのこと行くのをやめてしまおうかと、そんなことさえ思ってしまう。 画集は見たことあるし、ポストカードだって持っているし、好きだけど、でもどうしても見たいほど好きかって聞かれたら、そうでもない気がする。 一度行くのをやめようかと思うと、どんどんその方向へ、考えが進んで行ってしまう。 むしろ、それが一番いい気さえしてきた。 タダで見に行けるのに、どうして諦めるのかと周囲は呆れるかもしれないが、この思考回路こそがネガティブ速水。 チケットをもらってから、ずっとうだうだ考え込んでて、朝練にも身が入らないし、授業中もボーッとしてしまっていた速水だが、これでやっと部活に集中できそうだ。 心にのしかかっていたものが取れてスッキリした速水の目に、廊下を歩く神童と霧野の姿が映った。 移動教室だろうか、勉強道具一式を手に、仲良く話しながら歩いている。 せっかくの招待券だし、無駄にするのは勿体ないから、あの二人に譲ろうかな。 なんか、もう。本末が転倒している気がするが速水はそれに気が付かない。 二人が姿を消してしまっては大変だと、慌てて神童と霧野を呼び止める。 「神童くん、霧野くん。あの、絵画展の招待券があるので、もし良かったら二人でいきませんか?」 そう言って、二人ににチケットを差し出す速水。 一度諦めると決めてしまったので、何だかとても気が楽だ。 あまり有名な画家ではないが、まぁタダだし。出掛けたついでにでも寄ってもらえらば、程度の考えだった。 だが、事態は速水の思わぬ方向へ進むのである。 |
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| 企画第一弾『ポジティブキャンペーン』をお届けします。 『ぷりんちゅ』のみに。ちゃんと合同の、「普段ネガティブな速水が、1週間に1度ポジティブになっちゃうぜ!!」という企画です。 つまり、1週間に1作品、速水中心に更新されていく予定です。 第三話です。 あれ、なんかネガティブ逆戻りじゃね??? ゴメンささい!! |
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